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大阪簡易裁判所 昭和33年(ろ)2532号 判決

被告人 津谷雅一

主文

本件公訴を棄却する。

理由

本件起訴状には、被告人の住居、職業、公訴事実、罰条の各欄に「司法警察職員の道路交通取締法令違反被疑事件報告書記載のとおり。」との記載があり、右報告書の写が添付されている。

ところで、右の報告書写を見ると、司法巡査が被告人の道路交通取締法令に違反する行為を現認した旨を上司に報告した書面の写であることが窺知できる。したがつて、かような書類を起訴状に添付し、その内容を引用することは、刑訴法二五六条六項に違反するといわなければならない。

もつとも、公訴の提起と同時に略式命令を請求する場合には、右条項の適用が排除されるので、裁判所が略式命令を発する段階においては、起訴状に右のような書類を添付しその内容を引用しても、右条項違反の問題はおこる余地がないけれども、本件のように略式命令に対し正式裁判の請求がなされ、通常の規定にしたがつて審判が行なわれる段階に至れば、右条項違反が問題とされなければならない。

以上の理由により、本件起訴状の方式は、刑訴法二五六条六項に違反することが明らかであり、この違法は治癒の余地がないほど重大なものと解されるので、本件公訴の提起は無効である。

よつて、刑訴法三三八条四号により、本件公訴を棄却する。

(裁判官 谷水央)

起訴状〈省略〉

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